金融機関の担当者は、日々の営業活動を通じて、融資案件につながる情報を収集しています。
資金ニーズのある会社との条件交渉の中から、保証会社を利用するか、プロパー融資とするかを判断し、収集した情報や調査内容をもとに融資稟議書を作成します。
そして、決裁権限を持つ支店長や本部の審査部門へ申請して、審査を受けるのが一般的です。
その審査において、特に重要視されるのが「融資が可能かどうか(信用リスクの見極め)」と「希望する融資金額が妥当かどうか(過大融資のリスクの回避)」の2点です
今回、融資審査において重要視されるこの2つのポイントについて解説していきます。
《目次》
1.融資が可能かどうか(信用リスクの見極め)
2.融資金額の妥当性(過大融資のリスクの回避)
3.まとめ
融資の可否判断において、まず重要なのは返済能力です。
運転資金・設備資金共通して、審査の第一段階に「融資が可能かどうか」、貸し出しされた資金が確実に返済されるかを多角的に評価します。
具体的には、次の項目が重視されます。
✅財務内容とキャッシュフロー
決算書や試算表を通じて、業績や利益水準、債務の状況、自己資本の厚みを確認します。
また、営業活動によるキャッシュフローがプラスであるかは、返済原資の有無を判断する上での重要な指標です。
損益計算書から、「減価償却費+税引き後利益」で返済できるか大枠を確認することができます。
また、仮に赤字で返済が厳しいという場合でも、今回は一過性の赤字であった等のその理由を明確に説明することで、審査のテーブルに乗る場合もあります。
損益計算書で問題がなくても、貸借対照表上で債務超過である場合や「金融機関が気にする勘定科目」が目立ってしまうと審査もより慎重におこなうことになります。
融資を受けやすい決算書の作成を日ごろから心がけることが大切です。
✅債務償還年数
借入金を税引き後利益で何年で返済できるかを示す「債務償還年数」も、審査において基本的なチェックポイントです。
目安としては、10年以内であれば健全とされるケースが多いですが、業種や設備投資の内容によって柔軟に判断されることもあります。
✅経営者の資質や市場環境(定性情報)
数字だけではなく、経営者の信頼性や実行力、会社の経営方針や将来の見通し、業界内でのトレンドなども審査の対象にあげられます。
例えば、業績が一時的に悪化していても、事業計画書の作成の有無によって金融機関からの評価が変わることがあります。
適時、事業計画書の作成を行い、今後の会社の経営方針や事業の見通しを説明できるようにしておくことも融資審査の際には重要です。
✅担保や保証の有無
返済能力にやや不安がある場合でも、担保提供や保証人があることでリスクが軽減され、融資が可能と判断されるケースもあります。
これらは「保全」と呼ばれ、審査上の補完要素となります。
保全が取れるかどうかや代表者の人柄、信用情報に傷がついていないか等の審査も行われます。
第二段階である「融資金額の妥当性」については、返済能力が認められたとしても、希望する融資金額が過大であれば、融資は実行されません。
金融機関は、借入希望額と実態とのバランスを慎重に見極めます。
✅資金使途との整合性
融資の目的が明確であるか、そしてその目的に対して金額が適正かどうかは非常に重要です。
例えば、運転資金の場合であれば、「売上債権+棚卸資産-支払債務」で計算される金額が目安となります。
設備投資であれば、購入する設備の金額とその耐用年数により計算される金額が目安となります。
また、機械の購入を行う場合であれば、その機械を導入することにより年間どれくらいの利益を生み出すか、生産性や効率性が高まるかといったことも確認していきます。
✅財務とのバランス
融資金額が売上や利益規模に対して過大ではないか確認します。
一般的に、年商の2~3割程度が上限の目安とされることが多く、借入金の依存度が高すぎる場合には慎重な判断となります。
✅返済計画の現実性
返済期間や毎月の返済額がキャッシュフローに見合っているかを確認します。
無理のある返済計画は、会社の経営に支障をきたすリスクがあるため、金融機関はこの点を特に重視します。
✅他行借入との兼ね合い
既存の借入の状況や、他行とのバランスも考慮されます。
金融機関にとって、単独で過大な貸出しを行うことはリスクとなるため、全体の債務状況との整合性も審査の上で確認します。
融資審査は、単に「貸せるかどうか」だけではなく、「いくらまで貸せるか」という視点からも慎重に行われます。これは金融機関にとってのリスク管理であると同時に、会社にとっても無理のない資金調達を実現するための仕組みです。
経営者がこうした審査の視点を理解して、十分な準備を行うことで、融資交渉の成功率は大きく高まります。
また、融資は単に資金を得る手段だけではなく、会社を成長させるための重要なステップでもあります。事業計画をしっかり立てたうえで、金融機関の担当者に対して具体的に根拠のある説明を行うことが、長期的な信頼関係の構築にもつながります。
スムーズに融資を受けるためには、金融機関から信頼される決算書や月々の試算表を作成することが欠かせません。そのためにも、専門家のアドバイスを受けながら適切な準備を進めることをおすすめします。
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