令和3年度 税制改正大綱の解説

令和2年12月10日に令和3年度の税制改正の大綱が発表されました。

税制改正の大綱のタイトル内容として、「ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生」「デジタル社会の実現」「グリーン社会の実現」「中小企業の支援、地方創生」「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」「経済のデジタル化への国際課税上の対応」「円滑・適正な納税のための環境整備」が掲げられています。

具体的に、コロナ禍での「ウィズコロナ・ポストコロナ」、環境面からの「脱炭素」、経済企業活動の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」などのキーワードから現状の経済や社会環境の方向性を反映した税制改正の内容となっています。

改正内容のうち、中小企業や個人事業者、資産税に関連する改正事項を中心にまとめています。

 

《目次》

1.個人所得課税

2.資産課税

3.法人課税

4.納税環境整備

5.まとめ

個人所得課税

住宅ローン控除に関する改正が行われております。消費税10%の改正により住宅ローン控除の控除期間を13年間とする特例が延長され、また、住宅ローン控除が適用される住宅の床面積の要件が40㎡以上50㎡未満の住宅も対象とされております。(適用される方の年間の所得金額が1,000万円以下である場合)

住宅ローン控除は減税効果の改正内容とされており、適用を受ける際には購入住宅の契約時期が重要となります。

大綱案 内容 増減税の影響
改正前 改正後
①住宅ローン控除特例適用期間の延長

消費税10%での取得 

控除期間13年間

契約入居の期間を1年延長

・注文住宅契約:R3.9月30日まで

・分譲住宅契約:R3.11月30日まで

・入居期限:R4.12月末まで

減税
②住宅ローン控除床面積要件の緩和 50㎡以上 控除期間が13年の場合に限り、合計所得金額1,000万円以下40㎡以上50㎡未満適用対象 減税
③子育てに係る助成等の非課税措置 市町村等が行う助成について雑所得として課税 非課税 減税

①住宅ローン控除特例適用期間の延長

住宅の購入に係る消費税が10%の場合、住宅ローン控除の控除期間を13年間とされていた特例が延長されます。

注文住宅契約の場合は2020年(令和2年)10月1日から2021年(令和3年)9月30日、分譲住宅契約の場合は2020年(令和2年)12月1日から2021年(令和3年)11月30日の間に契約が締結されており、2020年(令和4年)末までに入居することを要件に特例が受けられます。

②住宅ローン控除床面積要件の緩和

上記①に該当する場合で購入住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅についても対象とされます。ただし、適用を受ける方の年間の合計所得金額が1,000万円以下である場合に限ります。

③子育てに係る助成等の非課税措置

国や自治体からの子育てに係る助成(ベビーシッター・認可外保育施設の利用料等)について、子育て支援の観点から非課税とされます。

資産課税

相続税と贈与税の一本化への課税制度の見直しの議論が上がりましたが、今回の改正では根本的な改変は行われず、贈与税の非課税制度について一部が改正されております。

その他、土地の固定資産税の評価額の見直しも図られています。

大綱案 内容 増減税の影響
改正前 改正後
①住宅取得資金非課税の延長

R3.4月より非課税縮減

R3.4月以降も最大1,500万円非課税の適用

床面積要件の緩和

減税
②教育資金等一括贈与の見直し 贈与者の死亡時に原則、課税なし

贈与者の死亡時に相続税課税(除外あり)

孫の場合、2割加算の対象

増税
③固定資産税評価額の据え置き 3年に一度評価額見直し

令和3年は評価額見直しの年

評価上昇の場合、据置き

評価下落の場合、評価減を適用

減税

①住宅取得資金非課税の延長

直系尊属から住宅取得資金等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置につき、非課税の限度額が2020年(令和2年)4月から2021年(令和3年)3月契約分と同額に据え置くこととされております。

*2021年(令和3年)4月から2021年(令和3年)12月契約分まで引き続き適用されます。

<消費税率が10%となる住宅の非課税限度額>

・省エネルギー住宅や耐震性の高い良質な住宅については、1,500万円(改正前1,200万円)

・上記以外の住宅については、1,000万円(改正前700万円)

<上記以外の住宅の非課税限度額>

・省エネルギー住宅や耐震性の高い良質な住宅については、1,000万円(改正前800万円)

・上記以外の住宅については、500万円(改正前300万円)

また受贈者が、贈与を受けた年分の所得税の合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り、床面積要件の下限を40㎡以下までに引き下げ、40㎡以上240㎡以下が要件になります。(改正前の床面積は、50㎡以上240㎡以下が要件になります。)

②教育資金等一括贈与の見直し

教育資金等一括贈与の非課税措置を見直しした上で、適用期間が2年間延長されます。

贈与者の死亡時に、贈与資金のうち教育資金として費消していない残額がある場合、改正前は、贈与者の死亡前3年以内の贈与に係る残高についてのみ相続税の対象とされていましたが、改正により贈与に係る残額が相続税の対象とされます。ただし、受贈者が23歳未満の場合や学校に在学している場合には適用から除外されます。

受贈者が孫やひ孫の場合、相続税額の2割加算が適用されます。

教育資金等の一括贈与の非課税措置は、節税目的の効果が見直しされ増税傾向の改正内容となっています。

2021年(令和3年)3月31日までに行った贈与の場合は、今年度の改正前の適用になります。

③固定資産税評価額の据え置き

2021年(令和3年)は、3年に一度の固定資産税評価額の評価替えの年にあたり、本来であれば適正な時価に見直しが行われ固定資産税が課税されます。しかし、コロナ禍の影響を踏まえて、令和3年度の固定資産税・都市計画税の課税標準額は令和2年度の課税標準額に据え置きをする措置が取られます。

具体的には、2021年度(令和3年度)の固定資産税評価額が上がった土地については、令和2年度の評価額に据え置かれ、2021年度(令和3年度)の固定資産税評価額が下がった土地については、下がった固定資産税評価額により課税されます。

固定資産税・都市計画税の課税標準額の据え置きは、2021年度(令和3年度)に限られます。

また、固定資産税評価額をもとにする不動産取得税、登録免許税、相続税の税額計算にあたっては、その評価替え後の評価額により計算されますので確認が必要です。

 

法人課税

デジタルトランスフォーメーションや環境に即した設備投資関係の税制が新設されております。また、今まで所得拡大大税制の適用の判定や税額控除の計算が簡素化され、中小企業にとっては減税措置の内容となっております。

大綱案 内容 増減税の影響
改正前 改正後
①デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設 新設

事業適用設備となるソフトウェア、機械装置、器具備品、繰延資産

特別償却:取得価額×30%

税額控除:取得価額×3%(グループ外の事業者とデータ連携の場合は5%)

*特別償却もしくは税額控除の選択適用

主に大企業は減税
②カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設 新設

温室効果ガス削減に資する設備

特別償却:取得価額×50%

税額控除:取得価額×5%(温室効果ガス削減に著しく資するものは10%)

*特別償却もしくは税額控除の選択適用

主に大企業は減税
③所得拡大税制の見直し(中小企業の適用要件)

給与総額前期比増

    +

継続雇用者給与前期比1.5%増

給与総額前期比1.5%増

(大企業は新規採用者のみ控除対象)

概ね減税

①デジタルトランスフォーメーション(DX)設備促進税制の創設

 企業の持続的な成長を目的に、デジタルトランスフォーメーション(DX)による企業変革が重要視されることを踏まえて、新規ビジネスの構築に関する計画(事業適応計画)を策定して、持続性・クラウドの利用、サイバーセキュリティーなどの点が確保された「事業変革デジタル投資」を促進することを目的に創設されています。

 取得した事業適応設備の特別償却(30%)または税額控除(3%・5%)の選択適用とされ、2023年(令和5年)3月31日までの間に取得をした事業適応設備の資産に適用されます。

〇デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

企業がビジネス環境の大きな変化に対応していくなかで、データとデジタル技術を活用しながら、顧客や社会のニーズをもとに製品やサービスやビジネスモデルを変革していくなかで、業務プロセス、企業組織、企業文化をも変革して、競争上の優位性を確立することをいいます。オフィス業務が中心の会社が、テレワークに対応するためプロセスを見直すことが事例としてあげられます。広義の意味では、産業構造や社会基盤にまで影響が及ぶとされるデジタル改革のこととされます。

②カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設

 脱炭素化効果の高い先進的な設備(化合物パワー半導体等の生産設備への投資、生産プロセスの脱炭素化を進める投資)の取得について、税制上支援する措置が創設されています。

 取得した資産の特別償却(50%)または税額控除(5%・10%)の選択適用とされ、2024年(令和6年)3月31日までに「中長期環境適用生産性向上設備」または「中長期環境適応需要開拓製品生産設備」の取得をした資産に適用されます。

〇カーボンニュートラルとは

地球上の炭素(カーボン)の総量に変動をきたさない状態をいい、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロになるように、企業や社会の生産活動においてエネルギーの利用のあり方やシステムの社会実装を指す概念をいいます。

③所得拡大税制の見直し(中小企業の適用要件)

 中小企業における所得拡大促進税制について、給与等の支給額の増加割合の判定が、継続雇用者への給与等の支給額から、国内の雇用者への給与等の支給額へと見直しが行われています。

 所得拡大税制の適用期限も2年間延長され、改正後の制度は2021年(令和3年)4月1日から2023年(令和5年)3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。

 

納税環境整備

行政コストの削減や税務手続きの負担の軽減、対面手続きの省略が求められる観点から、納税者等の押印が必要とされていた税務関係書類について、実印・印鑑証明書を求めている手続きを除き、押印が不要とされます。

  押印が廃止される主な書類 押印手続きが必要となる主な書類
廃止・存続の理由 認印で可とされていたため廃止 実印の押印と印鑑証明書の添付が求められるため継続
手続き書類等

・確定申告書、修正申告書、更正の請求書

・給与所得者の保険料控除申告書

・給与所得者の扶養控除等申告書

・国税、地方税の各種届出書・申請書

・延納申請書、物納申請書

・遺産分割協議書

・所有権移転登記承諾書

・抵当権設定登記承諾書

・納税保証書

・質権設定の承諾書

 

*適用時期は、2021年(令和3年)4月1日以後に提出する税務関係書類について適用されます。

まとめ

今回の改正は、コロナ禍のもとウィズコロナ・ポストコロナ後の経済再生や環境社会、デジタル社会の実現を推進していく背景が象徴された税制改正の内容となっています。

その中で、個人関係では「住宅ローン控除」「住宅取得等資金の贈与」「教育資金等一括贈与」などが注目すべき改正項目といえます。

また、法人関係にとって「所得拡大促進税制」の見直しは、中小企業向けに適用される範囲が広がると見込まれます。「DX投資促進税制」「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」の創設については、大企業向けの改正に今後の投資活動の判断にもなると思われます。

税務関係書類についての一部押印義務の廃止は、ペーパレス化やテレワークなどの働き方の変化の要因も改正に反映されたと考えれます。

 

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