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2022年(令和4年)8月1日に国税庁から所得税の基本通達の改正について発表され、意見公募が開始されました。
今まで、副業の収入など確定申告の際に、「事業所得」なのか「雑所得」なのか、所得区分の判断が難しいと言われてきました。今回、主たる所得でない収入金額が300万円以下の場合、原則「雑所得」として取り扱うと改正が行われております。
近年、広まっている会社員の副業の収入などの申告に大きく影響する改正内容となっています。
《目次》
1.改正の背景
2.収入300万円以下の基準による改正の内容
3.事業所得から雑所得に変更する影響
4.その他の副業を取り巻く環境について
5.まとめ
近年、フードデリバリーやネットでの物品販売、シェアリングエコノミーなどの広がりにより、会社員の方でも、時間や場所にとらわれずに副業がしやすい環境が整っています。
そのため、副業で得た収入を確定申告する方も増えていますが、あいまいな所得区分の基準に「事業所得」なのか「雑所得」なのか、どの所得で申告するのかの判断がむずかしいとの声もありました。
また、社会的に事業といえる規模ではないにもかかわらず事業所得として申告して税制の優遇を受けることや、本来は生活費にあたるものを事業にかかった経費として必要経費に入れて、赤字の申告を行うなどの事例が散見されたことから、今回の改正の背景にあると考えられています。
今回はの改正案では、「その収入が主たる収入でなく(副業)であり、かつその収入が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、雑所得とする」とされています。
つまり、副業での収入が300万円以下であるときは、原則として「事業所得」としての申告は認めないという改正になります。
この改正は、2022年(令和4年)分の所得税から適用されます。
副業の収入を「事業所得」として申告する場合と、「雑所得」として申告する場合の申告での計算の違いは、下記の一覧のとおりです。
事業所得 | 雑所得 | |||
---|---|---|---|---|
青色申告特別控除 | 〇 | 最大65万円の控除ができる | × | 適用できない |
損益通算 | 〇 | 赤字を他の所得と相殺できる | × | 赤字は他の所得と相殺できない |
損失の繰り越し | 〇 | 翌年以降、最大3年間繰り越し | × | 損失の繰り越しは不可 |
少額減価償却資産の特例 | 〇 | 30万円未満の資産は必要経費 | × | 10万円以上の資産は減価償却が必要 |
今までは「事業所得」になるかどうかの明確な判断の基準がありませんでした。
事業を開始する時には開業届を税務署へ提出しますが、開業届を提出さえすれば「事業所得」で申告ができるという間違った解釈もなされることがありました。
今回の改正で、副業で300万円という一つの基準が明示されたことになります。
「事業所得」と「雑所得」の所得区分の違いで税金の影響額がどの程度になるのか、下記の事例を用いて、所得税の概算の計算をおこなっています。
(事例)会社員の方の給与収入500万円と仮定して、副業収入が150万円の黒字の場合と副業収入が△50万円の赤字の場合で、改正前と改正後の税金の概算計算は下記のとおりです。
給与収入500万円の会社員の方の副業のケース | 〇副業収入が黒字の場合 副業収入250万円ー経費100万円=150万円 | 〇副業収入が赤字の場合 副業収入250万円ー経費300万円=△50万円 | ||
---|---|---|---|---|
改正前(事業所得で申告) | 改正後(雑所得で申告) | 改正前(事業所得で申告) | 改正後(雑所得で申告) | |
給与所得 | 356万円 | 356万円 | 356万円 | 356万円 |
副業収入 | 250万円 | 250万円 | 250万円 | 250万円 |
副業経費 | △100万円 | △100万円 | △300万円 | △300万円 |
合計所得(給与所得+雑所得) | 441万円 | 506万円 | 306万円 | 356万円 |
所得計算の比較 | 青色申告特別控除(65万円) | 青色申告特別控除適用なし | 赤字の損益通算あり | 赤字の損益通算なし |
所得税 | 45.4万円 | ①58.4万円 | 20.8万円 | ②28.4万円 |
副業が150万円の黒字の場合、改正後、①税額が13万円増加することになり、副業収入が50万円の赤字の場合、改正後には、②税額が7.6万円増加することになります。
*所得税は、すべての収入を合算して、収入額によって税率が上がる累進課税で計算されます。
開業届の書面の提出で「事業所得」としての申告が認められることではなく、「事業所得」としての申告においては、
①自己の計算と危険において独立して営まれているか、
②営利性、有償性があるか、
③反復して継続しているか、
④社会的な地位が事業として客観的に認められているか、
などの条件が必要になります。
2023年(令和5年)10月からは消費税のインボイス制度が始まることに伴い、小規模事業者の請求書では、発注した取引の相手先側で消費税が控除できなくなります。
インボイス制度の開始後は、小規模事業者が受注を受けることができなくなったり、消費税相当額の値下げの要請を受ける可能性が指摘されています。
この点は、BtoBで副業を行っている会社員の方にも影響を受けることとなり、今回の改正案の300万円基準と総じて、会社員の副業に厳しい環境と懸念されております。
国税庁からの所得税の基本通達の改正により、2022年(令和4年)分の所得税の申告から、副業の収入の判定が300万円の金額基準が設けられるようになります。
今回の改正は通達の改正のため、法的な拘束力はありませんが、今後、一つの判断基準として「事業所得」か「雑所得」か所得区分の判別されるものと考えられます。
また、300万円の金額基準が明記されていますが、収入額が300万円以下はすべて「雑所得」にあたるものではないため、ご自身の収入が本業での事業の収入なのか、副業での収入なのか、事業の性質や仕事のバランスを前提に判断することが必要になります。
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