経営者の金融機関取引でよくあるお悩みと対応策

「融資を申し込んでも断られる」といったご相談が、経営者の方々から増えています。

その背景には、２０２４年４月に改正された金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の影響があり、各金融機関がこれまで以上に融資審査を慎重に行うようになっていることがあげられます。

特に、財務内容が悪化している企業に対しては、融資が通りにくい傾向が強まっています。

こうした状況で融資審査を通すためには、資金の使い道や返済の見通しを具体的に示した「事業計画書」の提出が不可欠です。

また、日頃から金融機関とのコミュニケーションを密にしておくことで、財務内容だけでは判断できない企業の強みや改善意欲を、融資担当者が内部で補足・説明してくれるケースもあります。

そのためには、資金繰り表や月次試算表を整えて、毎月の業績や資金の流れをきちんと説明できる体制を整えておくことが重要です。

さらに、士業の専門家が面談に同席することで、第三者からの信頼性が加わり、金融機関側にとっての安心材料にもなります。

金融機関では定期的に人事異動があり、担当者が数年以内に交代するのが一般的です。

そのたびに、これまでの取引経緯や信頼関係がうまく引き継がれず、経営者の方が「また一から説明をしなければならない」「ゼロから関係を築き直さなければならない」と感じるケースも少なくありません。

こうした負担を軽減するうえで有効なのが、新任の担当者に対して、自社の「事業計画書」を最初に渡すことです。

新任担当者は、前任者からの引き継ぎ情報が限られていたり、企業の背景を十分に把握できていないことも多いため、「事業計画書」を通じて、経営方針や将来の展望、資金の使途などを明確に伝えることが、理解と信頼を得る第一歩になります。

また、窓口を特定の担当者に限定せず、支店長や渉外担当役席、貸付担当役席など複数の関係者とも日頃から接点を持っておくことで、情報共有の体制が整いやすくなり、担当者が異動した場合でも、継続的な信頼関係の維持につながります。

融資を受ける際、「この金利は高いのでは？」「本当に経営者保証は必要なのか？」と感じながらも、内容を十分に理解しないまま手続きを進めてしまう経営者は少なくありません。

その背景には、提示された条件が妥当かどうかを判断するための情報が乏しく、他の選択肢と比較する機会も限られていることがあります。

また、金融機関に率直に質問しても、担当者が制度に詳しくなかったり、社内方針により具体的な説明を避けられることもあり、納得感が得られないまま話が進んでしまうケースも見受けられます。

こうした事態を避けるためにも、正式に申し込む前の段階で、複数の金融機関に相談し、条件や対応方針の違いを比較検討することが重要です。

さらに、融資制度に詳しい士業の専門家など、第三者の意見を事前に取り入れることで、金融機関との交渉にも自信を持って臨むことができます。

焦らず、時間をかけて比較と相談のプロセスを踏むことが、納得のいく金融機関との取引につながる近道です。